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音楽のページです
「作曲」
私は音そのものから入っていきました。ギターの弦をひとつ鳴らして、消えてゆくまで聴くのが好きでした。何かを叩き、その音を聞く。そこでいろんな手作りの楽器を作りました。その頃はアングラ劇団の音楽をしていて、作った楽器を芝居の中で演奏したりもしていました。シンセサイザーのかけらもない1970年の頃です。
そして劇団は解散して、本業の写真に専念して幾つかの作品を作りました。そのうちその写真の中から音楽が聞こえてきました。心象風景の写真だったのですが、何とも言えない音楽が聞こえるのです。その時に、根源は音楽なんだと感じました。じゃあ今から音楽を始めようと、写真をきっぱり辞めて、とは言っても食べていくために仕事としては続けていましたが、心は音楽だけになっていました。その音楽をするために稼いでは楽器に使い果たし、また稼いでは楽器につぎ込みの繰り返しで、これは今も変わっていませんが、とにかく音楽を追い求めていました。
それでも初めは良かったのです。何せやることなすこと今までやったことのないことですから、新鮮でした。笛とかギターが入っていたので、いわゆるミュージック・コンクレート ( 自然界の音、機械音などに電気的操作を加え、組み合わせて構成する音楽 ) までいかないけど、それに近い音楽で、その時の作品"無明/遥かなものへ"はオーディオユニオンでハイファイ録音賞をいただき、前途洋々かに見えたのですが、そうは上手くいきませんでした。それからが大変だったのです。この後にもう一枚アルバム"THE MOVEMENT"を作りましたが、2年、3年もしてくると大体やることはやってしまい、行き詰まっていました。
その頃はイメージ‥‥つまり絵みたいな楽譜を書いて現代音楽のようなものを作っていましたが、イメージばかり先行して、なかなか具体的に音になっていきません。ましてや音楽になりませんでした。とにかく頭の中で音楽を作っていたわけですから。
昼間働いて夜中から明け方まで作曲をして、また会社に行くという生活がつづきましたが、結局たいしたことは出来ずに病気になって仕事を辞め、アルバイト生活となりました。何だか人生の苦労話みたいになってきたので、この辺でやめますが、とにかく頭では音楽は出来ないということが言いたかったわけで、それを身をもって経験したということなのです。
その後に運命的な出来事が起こり、いろいろな瞑想を経験するうちに、どんどん自分を解放していきました。今まで溜まっていた私の中のゴミを、一つ一つ見つけてはクリアーにしていきました。それはとても大変な作業だったのですが、しだいに私は踊れるほどに軽くなっていました。自分の中にダンスを見つけていました。踊りを踊るのではなく、踊りが起こってくるのです。そう、それまでは一生懸命踊ろうと、もがいていたのです。ですから踊れなかったのは、当然かもしれません。
もう自分の中が空っぽになっていました。自分だと思っていたものは、実は本当の自分ではなかったのです。例えば、簡単に言うと卵の殻が自分の姿だと思っていたというようなことです。そして自分の中が空っぽになってくると、いろんなものが見え始めます。UFOとかお化けではありませんよ、自分の中に入ってくるいろんな感情や思考がです。おまけに他人までよく見えるようになります。そして空っぽだからこそ、そこに音楽の入るスペースが出来てきました。そこに音楽がやってくるのです。そして不思議なことにそのスペースにはネガティブなことが入ってくると音楽は流れてきません。これは頭で考えると言うことも入っています。でもあるとき、うちの猫が死んだときに出てきた音楽はちっとも悲しい曲ではないのです。とっても明るく、晴れ晴れとした曲が出てきたのです。こんな悲しいときに、何でだろうと思ったことがありました。泣くことがすべてネガティブだということではないということなのでしょうか。そういう感情とは違うところにあるようです。ネガティブなことは、創作エネルギーを生みません。愛、歓び、楽しみ、心地よさが入ると、それが音楽となって出てきます。
そしてそれからが私にとって本当の作曲が始まりました。その音楽を受け取って音にしていきます。具体的に形にしてゆきます。ですから、どちらかというと翻訳に近いのです。私はただ楽器の前に座って曲が出てくるのを待っています。曲が出てきたらそれに協力していきます。はじめはどんな曲が出来るのか分かりません。途中からああ、こんな曲なのかと言う具合です。一つの音から始まり、いくつも音が重なり合いながら形が見えてきます。そして曲が進んでいくうちに、その音楽に感動して泣いてしまうのです。ふつう自分で曲を書いてて自分で泣くなんて、変なやつだと思うでしょうが、そうではないのです。なぜなら自分で作ったという感じではないからです。ですから、でき上がったときに「ほんとに素晴らしい曲だから、聴いて!!」と言ってしまいます。私は自分でCDを売り歩いていますが、「ほんとにいい曲だから」と何の抵抗もなく言えます。恥ずかしげもなく言えます。「素晴らしい曲ですから是非このお店においてください」と言って営業しています。これをどう受け取っているかは私には分かりませんが、私としてはこれ以外に言いようがないのですから仕方ありません。
いかがでしたか、私の作曲法がお分かりいただけたでしょうか。きっと曲を聴いてもらえば、その中に何かを感じてもらえると思います。同じ花を見たときに、一人一人の感じ方があるように、たくさんの作曲の仕方があると思いますが、こういうのもあるんだということを分かっていただけたらと思います。
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